高齢者虐待は、家庭だけでなく介護施設や介護サービスの現場でも起こり得る重大な権利侵害です。
保育士試験の社会福祉では、高齢者虐待防止法の対象者、虐待の区分・類型、通報義務を正しく区別する必要があります。独学者向けに、ほかの虐待関連法との違いと過去問の重要論点を整理します。
高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律とは?
高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)は、高齢者の尊厳と権利利益を守るため、虐待の防止、被虐待高齢者の保護、養護者への支援などを定める法律です。
通称「高齢者虐待防止法」といい、平成18年4月1日に施行されました。対象となる高齢者は原則65歳以上で、虐待を「養護者によるもの」と「養介護施設従事者等によるもの」に分けています。
保育士試験で覚えるポイント
高齢者虐待は、家族・親族・同居人など、現に高齢者の世話をする養護者による虐待と、老人福祉法・介護保険法に定める施設・事業で働く養介護施設従事者等による虐待の2区分です。
虐待の類型は、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5つです。
養護者による虐待では、高齢者の生命・身体に重大な危険がある場合は市町村への通報が義務、それ以外は努力義務です。養介護施設従事者等が自らの勤務する施設等で虐待を発見した場合は、重大性を問わず市町村への通報が義務となります。
| 法律 | 主な対象 | 法律上の虐待者の区分 | 虐待の類型 | 通報・通告の基本 |
|---|---|---|---|---|
| 高齢者虐待防止法 | 原則65歳以上 | 養護者、養介護施設従事者等 | 身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待 | 養護者虐待は重大な危険がある場合に通報義務、その他は努力義務。施設従事者等には発見時の通報義務 |
| 障害者虐待防止法 | 障害者 | 養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者 | 身体的虐待、放棄・放置、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待 | 虐待を受けたと思われる障害者の発見者に通報義務 |
| 児童虐待防止法 | 18歳未満の児童 | 児童を現に監護する保護者 | 身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待 経済的虐待はなし | 虐待を受けたと思われる児童の発見者に通告義務 |
65歳以上の障害者は、高齢者虐待防止法と障害者虐待防止法のどちらの支援対象にもなり得ます。両法に優先関係はなく、本人の状況に応じて関係部署が連携して対応します。
令和3年 保育士試験(前期)問題 社会福祉 問18では、虐待の5類型と地域包括支援センターが問われました。令和6年 保育士試験(前期)問題 社会福祉 問8では、老人福祉法、高齢社会対策基本法、介護保険法、高齢者虐待防止法の制定順が問われました。
高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律の○×クイズ
問題
養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見し、その生命または身体に重大な危険が生じている場合、発見者は速やかに市町村へ通報しなければならない。○か×か。
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解答
○
解説
生命または身体に重大な危険がある場合は、市町村への通報が義務づけられています。重大な危険がある場合以外は、速やかな通報に努めるものとされています。
同じ理由による見落としです。関連用語候補が空欄でも、資料で確認でき、対象用語との関係が強い用語は選定すべきでした。
高齢者虐待防止法では、少なくとも地域包括支援センターと障害者虐待防止法は直接関連するため、「関連用語」を省略するのは不適切です。次の内容を追記できます。
関連用語
いいえ。法律上の通報先は市町村です。「通告」ではなく「通報」と表現します。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談や権利擁護を担い、市町村から委託を受けて通報を受理する場合もあります。ただし、すべての地域で一律に法定の通報先となるわけではありません。施設従事者等による虐待の通報を受けた場合も、市町村の担当部署へつなぎます。高齢者虐待防止法│e-Gov法令検索、高齢者虐待対応マニュアル│厚生労働省
試験対策では、次のように覚えるのが正確です。
- 法律上の通報先:市町村
- 地域包括支援センター:相談・権利擁護や虐待対応への協力を担い、地域によっては受付窓口になる
したがって、関連用語の文章は次のように直すべきです。
関連用語
高齢者虐待の法律上の通報先は市町村ですが、地域包括支援センターは、高齢者の総合相談や権利擁護を担い、市町村と連携して虐待対応に関わります。また、虐待者の区分や通報義務の違いを整理するには、障害者虐待防止法と比較して覚えましょう。




